研 究

研究内容の一部をご紹介します。

7回膜貫通型タンパク質

画像:7回膜貫通型タンパク質

バクテリオロドプシンやGタンパク質共役型受容体(GPCR)などのように7本の膜貫通へリックスを有する膜タンパク質の構造は興味深いので、電子線結晶学を用いてバクテリオロドプシンの構造を3Å分解能で解析した。GPCRsの構造解析はそれより難しいが、GPCRsは創薬の重要な標的であり、細胞における情報伝達カスケードのカギとなる分子であるので、我々は一貫してそれらの構造と機能の研究を続けており、長年の共同研究の結果、X線構造解析によりエンドセリンB型受容体とその内在性ペプチドリガンドであるエンドセリン-1(ET-1)との相互作用機序を明らかにすることができた。

エンドセリンB型受容体とET-1との複合体構造の解説

水チャネル

画像:水チャネル

水チャネル(アクアポリン)の働きである速い水の透過と高い水分子の選択性を理解するために、生体内に近い脂質膜に埋まった状態のアクアポリンの立体構造を高分解能で決定し、実験的に解き明かしていくことに重点を置いています。特に、ヒトの体に13種類存在する水チャネルのうち、私たちは脳に多く発現しているアクアポリン-4やノックアウトマウスにおいて多発性嚢胞腎腎臓を引きこすアクアポリン-11に着目し、極低温電子顕微鏡、電子線結晶解析、フリーズフラクチャー、光学顕微鏡、ストップトフロー、分子生物学など、必要な技術を駆使して、水チャネルと脳の高次機能を含めた生体内での働きを解明していきます。

膜電位感受性ナトリウムチャネル

画像:膜電位感受性ナトリウムチャネル

膜電位感受性ナトリウムチャネルは神経細胞の軸索上で活動電位の発生を担うイオンチャネルです。当研究室ではこのチャネルのナトリウムイオン選択性と活性制御の分子メカニズムの解明を目指し、結晶構造解析と電気生理学的手法を用いて研究を進めています。

ギャップ結合チャネル

画像:ギャップ結合チャネル

細胞間結合として多細胞生物に広く存在するギャップ結合チャネルは、発生、筋収縮の同調、免疫機能のほか様々な生物学的プロセスに関与していると考えられています。当研究室ではクライオ電子顕微鏡法を用いてギャップ結合チャネルの開閉機構を含めた分子基盤の解明を目指しています。クライオ電子顕微鏡法の中でも結晶化を必要としない単粒子解析によって、当研究室でもギャップ結合チャネルの原子モデルの構築に成功しています。この手法は今後も膜タンパク質の構造解析に必須の手段になると考えています。
脊椎動物が持つコネキシンのほか、無脊椎動物に存在するイネキシンにも取り組んでおり、自然界に存在するギャップ結合チャネルの多様性と共通した機能を明らかにしたいと考えています。

胃プロトンポンプ

画像:胃プロトンポンプ

食物消化時に我々の胃袋の中はpH1という強酸性状態になります。これは消化にとって重要ですし、病原体の侵入を防ぐための防御線としても重要です。一方で胃酸過多は胃潰瘍や逆流性食道炎の原因となります。胃プロトンポンプ, H+,K+-ATPaseは胃酸分泌を直接担う膜タンパク質です。このポンプが作り出す、細胞内外でのpH差にして6ユニット、つまり100万倍ものプロトン濃度勾配は、自然界に存在するどのイオンポンプも達成できない大きなものです。機能解析と電子線結晶学による構造解析を通して、我々はこの分子特有の作動メカニズムの解明に取り組んでいます。

タイトジャンクション/クローディン

画像:IP39

皮膚・消化管・臓器・血管などの組織表面は、上皮細胞のシートに覆われていますが、単純に内外を隔てるだけではなく、その境界領域においては分子の透過を制御することによって内的な恒常性を維持しています。このような機能を担うタイトジャンクション(TJ)と呼ばれる細胞間接着装置は、隣接する細胞膜同士を近接させ、物理的な制限によって細胞間隙経路を実現しており、この経路を介して外界とのイオンや小分子の透過を制御しています。TJの主要構成分子はクローディンと呼ばれる膜タンパク質であり、網目状の接着重合体(TJストランド)形成に伴い細胞間を密着させていると考えられています。このTJのバリア機能を分子・原子レベルで明らかにするため、我々はX線構造解析、電子線構造解析、凍結割断レプリカ法を用いて研究に取り組んでいます。

クローディン19と毒素(C-CPE)の複合体構造の解説

クローディン15立体構造の解説

インフルエンザウィルス

画像:インフルエンザウィルス

インフルエンザウィルスを極低温電子顕微鏡で観察した結果、この電子顕微鏡像で示すように、外側に脂質1重膜とその内側に、72Åのタンパク質を含む非対称の層でできている。感染性の高いインフルエンザウィルスはこのような非対称のエンベロープを持っている高い密度の粒子である。一方、通常の脂質2重膜を有する薄い密度を示す粒子の感染性は極めて弱いか、ないことが明らかになった。それゆえ、インフルエンザウィルスのモデルとして、脂質1重膜とその内側にMタンパク質からなるおよそ72Åの層がある構造を提案する。

シナプスの分子機構

画像:シナプスの分子機構

神経系において主な神経細胞間情報伝達の場であるシナプスの分子機構を研究しています。特に、神経伝達物質を受け取る後シナプス膜に存在するシナプス後肥厚(PSD)と呼ばれる超分子複合体に着目し、PSDの形成に関わる足場タンパク質であるPSD-95や、細胞接着分子であるLRRTMがシナプスの形成および情報伝達において果たす役割を、電気生理学、生化学、蛍光顕微鏡等を用いて解明する事を目的としています。

多能性幹細胞

画像:Muse細胞

当研究室では、生体内に存在する多能性幹細胞の性質の解明に取り組むと共に、成体組織を形成する様々な種類の細胞を作製することを目指しています。また、多能性幹細胞の遊走のメカニズムを明らかにすることを目的として、遊走に関わる因子や受容体の研究を進めています。

極低温電子顕微鏡

画像:極低温電子顕微鏡

生物試料を高分解能で観察するには電子線損傷が重大な問題である。この問題を軽減するために、装置分解能2Åを達成できる極低温電子顕微鏡を開発した。分解能や操作性を改善するなど、異なる特徴を有する極低温電子顕微鏡を開発してきた。このタイプの電子顕微鏡は輻射熱を最少にするために金色にメッキした液体窒素タンクとヘリウムタンクを備えており、通常4.2Kのステージ温度で観察するが、試料を挿入する小さいポットは超流動ヘリウムで1.5Kまで冷却することができる。最近、電子線トモグラフィーやその他の方法で立体構造解析を行うために傾斜機構付の第7世代の極低温電子顕微鏡を開発した。

電子線結晶学

画像:電子線結晶学

電子線結晶学の特徴は、1)膜タンパク質が膜内に存在する天然に近い状態での立体構造を決定できる、2)三次元結晶と異なり二次元結晶を使用するため、結晶内における本来存在しないタンパク質間の相互作用に起因する不自然な構造を観察することがない、3)結晶性のよくない結晶からでも、位相を直接電子顕微鏡写真から計算できるので、低分解能でも密度図の信頼性が高くノイズが少ない立体構造を得られる、等が挙げられます。一方で、X線結晶学分野で通常見られる成熟したユーザーフレンドリーな構造解析プログラムパッケージが乏しく、構造解析計算に多くの労力と時間がかかっていました。この問題を解決するために、図のようなグラフィックス上で動くプログラム開発を行ない構造機能解明の迅速化に貢献しています。